解説
日本人特有の美的な比喩表現である「奥ゆかしさ」を、現代風に、庭に表現する。この庭の情緒的な美徳スタイルこそ、我が国から発信する”グローバルスタンダード”だと考えています。皆様にはその奥に広がる「可能性」や「創造性」を感じていただければ幸いです。
”Feel it ”
Plan of Show Garden
作品名:「Feel it~情緒的美徳スタイル~」ショーガーデン プラン決定まで
プラン決定にあたり、クローバーガーデンでは事前にデザイナー全員にて社内コンペを開催しました。各々のデザインが1位に。プラン決定後、最終図面の作成・植栽や施工計画など全スタッフが分担し、準備作業を行っていきました。
基本コンセプト:「日本人の美的感覚」
もともと日本人は、個人的志向の欧米人と比べて集団的思考が強く、何より「和」を重んじる民族である。和の中では、「均質性」「協調性」「思いやり」等が美徳とされる。自己主張をせず、全体の意見が決まるまでは曖昧に表現し、自分の考えをはっきり伝えようとしない。聞き手はここで、相手が何を言いたいのか察する力が必要となってくる。いわゆる「以心伝心」これが日本人のコミュニケーションの真髄。美徳である。この日本人スタイルこそが「奥ゆかしさ」と美的に比喩される。
転じて、日本人は曖昧さ(不整列・ハッキリしないもの)に美しさを感じ、その様子から察して、美しさを見出す民族であると言える。この概念が「侘び・寂び」という、日本人特有の美的感覚を生むことになる。
・侘び…粗末な様子・簡素な様子。見た目より中身。見た目が粗末でも質的なものに美しさを見出す。
事例:利休と秀吉の「朝顔の茶会」
数千・数万の咲き誇る豪華な花の雰囲気からは感じる事ができない、その花が持つ本来の美しさを味わう「侘び」の精神の奥ゆかしさである。
・寂び…経年変化。自然界の様々な作用による産物に対して、美しさを見出す。
事例:石に苔が生える様子を、その情景の奥に何があるのかを察し、そこで何十年何百年動かない事により
石の奥から生まれ出る様子に対して、美しさを見出す。寂びの精神の奥ゆかしさである。
昨今、日本人のこういった民族性・美的感覚こそがグローバルスタンダード(世界的基準価値)になるのではと言われているがそれには欧米をはじめ、様々な民族性を受け入れ、新たな形でアウトプットする革新的な「奥ゆかしさ」が必要となってくるのではないでしょうか。
今回のガーデンショーは、日本人のこうした「奥ゆかしさ」を、革新的に庭に表現する。侘びスタイルを表現し、その奥に無限に広がる可能性・創造性を人々に想像させる(察してもらう)。簡素(侘び)な中にも様々な文化(民族性)を取り入れた経年変化の美・自然美を表現したい。
【メイキング】
「いったいどうやって造ったんですか?」と会場で沢山のご質問をいただきました。
“モスウォール”(コケの壁)。完成までの道のりをご紹介いたします。
10m×10m=100㎡の広さを誇る緑豊かなショーガーデン。この空間をぐるりと囲む「壁」の骨格はなんと木製!
幾つものパーツに分けて作り、バラバラの状態で会場の国営昭和記念公園(東京都立川市)に運んで組み立てました。青いスチロール製の下地を貼った骨格の上になんと4万本(!!)の爪楊枝を使い、黙々と手作業でコケ貼り。揃いのポロシャツで気合を入れての作業。樹木や下草の植え込みも含め、何日もかけ完成させました。